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小説や評論を書きつつ短歌も作っている私の読書日記。毎日出会うさまざまな本への思いを中心に、日々の出来事やその感想についても綴ります。おつきあいいただければうれしいです。

ミヒャエル・エンデ「ものがたりの余白」

「エンデが最後に話したこと」という副題がついています。彼が亡くなったのは1995年ですが、93年頃から亡くなる直前までの対話(聞き手は翻訳家の田村都志夫氏)をまとめた本です。もっと長生きをして、すばらしいファンタジーをもっと読ませてもらいたかったと願わずにはいられません。冒頭では「はてしない物語」をどのような過程を経て執筆したかについて語っていて、とても興味深いです。日本文化にも造詣が深く、歌舞伎や能を愛するエンデは、自らの戯曲「ゴッゴローリ伝説」を「バイエルンのカブキ」と呼んでいますが、次のようなユーモラスな逸話も語っています。以下、引用します。

 ミラノで、日本人の演出で「蝶々夫人」が上演されたときに……その演出家は、舞台の書き割りを変えるために、黒衣(くろこ)を使いたいと思っていたのです。そして、最初はヨーロッパ人の裏方を使ってやってみましたが、だめでした。日本から、あの黒衣の人たちを呼び寄せなければならなかった。なぜなら、日本の黒衣だけが、舞台上で存在しないのです。それをわたしはこの目で本当に見ることができる。かれらはそこにいない。かれらはそこにいないのです。かれらはまったく舞台の邪魔にならない。
(わたしはいない……)と思っているからでしょう。すると、かれらは本当にいなくなるのです。
 しかし、ヨーロッパ人だったら、
(わたしはいない……)と思っても、なんの役にも立たない(笑い)。そんなことにはおかまいなく、かれらはいやになるほど舞台上に存在するでしょうし、邪魔します(笑い)。
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プロフィール

Serenie

Author:Serenie
セリーニーと読みます。東京に住む女性です。
小説や評論を書いています。短歌も作ります。
翻訳の経験もあり、訳書が一冊あります。
趣味は読書のほか、音楽・演劇・美術鑑賞など。

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